コラム

2025.11.14

胃カメラ検査後の食事〜専門医が教える回復のポイント

 

 

 

 

 

胃カメラ検査後の食事はいつから始めるべき?

胃カメラ検査を受けた後、多くの患者さんが「いつから食事を再開していいのか」と不安を感じています。検査で空腹状態が続いた後だけに、早く何か食べたいという気持ちは理解できます。

胃カメラ検査では、のどの麻酔や鎮静剤を使用することが一般的です。当院では、喉の反射を抑えるためにキシロカインビスカスという局所麻酔を使用しています。この麻酔は約1時間程度で効果が切れますが、その間は飲み込む感覚が麻痺しているため、誤嚥のリスクがあります。

鎮静剤を使用した場合は、完全に目が覚めて意識がはっきりするまで食事を控える必要があります。意識がぼんやりしている状態で飲食すると、食べ物や水分が気管に入ってしまう危険性があるからです。

検査後は以下の手順で食事を再開するのが安全です:

  • ・検査終了後、少なくとも1時間は飲食を控える
  • ・1時間経過後、まず少量の常温の水を飲んでみる
  • ・むせずに水が飲めたら、消化の良い食事から少しずつ始める

 

胃カメラ検査は胃に負担をかけるため、検査直後の胃はとてもデリケートな状態です。特に組織検査(生検)を行った場合は、胃の粘膜に小さな傷がついているため、より慎重に食事を再開する必要があります。

胃カメラ検査後に食べてはいけないものとは?

胃カメラ検査後の胃は敏感な状態にあります。検査で空気を送り込んだことによる膨満感が残っていたり、粘膜が刺激を受けていたりします。そのため、検査当日は胃に優しい食事を心がけることが大切です。

特に避けるべき食品には以下のようなものがあります。これらは胃への負担が大きく、消化不良や胃の不快感を引き起こす可能性があるからです。

  • 脂っこい食品:揚げ物、天ぷら、カツ、唐揚げ、フライドポテトなど
  • 刺激物:カレー、キムチ、唐辛子などの香辛料を使った料理
  • アルコール類:ビール、ワイン、日本酒など全てのアルコール飲料
  • 繊維質の多い食品:レンコン、ゴボウ、こんにゃく、海藻類、キノコ類
  • 脂質の多い肉・加工肉:ベーコン、ソーセージなど

これらの食品は消化に時間がかかり、胃に負担をかけます。特に組織検査を行った場合は、出血のリスクを高める可能性もあるため、検査当日は避けるようにしましょう。

 

 

 

 

 

 

胃カメラ検査後に食べ物や飲み物で気をつけるべきことは他にもあります。キンキンに冷えた飲み物や炭酸飲料も胃を刺激するので避けた方が無難です。また、コーヒーや紅茶などのカフェインを含む飲み物も胃酸の分泌を促進するため、検査当日は控えるようにしましょう。

もし生検を行った場合は、傷口からの出血リスクを考慮して、より慎重に食事を選ぶ必要があります。刺激物や硬い食べ物は特に避け、検査当日だけでなく翌日も胃に優しい食事を続けることをお勧めします。

 

胃カメラ検査後におすすめの食事メニュー

胃カメラ検査後の食事は、消化が良く胃に負担をかけないものを選ぶことが重要です。検査で疲れた胃を休ませながら、必要な栄養を摂取できるメニューを心がけましょう。

おすすめの食品には以下のようなものがあります:

  • ・炭水化物:おかゆ、やわらかいご飯、うどん
  • ・タンパク質:豆腐、煮魚、鶏のささみ肉、赤身肉
  • ・野菜:みそ汁、大根・にんじん・かぼちゃなどの煮物
  • ・果物・デザート:りんご、バナナ、ヨーグルト、プリン
  • ・飲み物:麦茶、白湯、スポーツドリンク(常温)

 

 

 

 

 

これらの食品は消化が良く、胃への負担が少ないため、検査後の食事として適しています。特に最初の食事は少量から始め、体調を見ながら徐々に量を増やしていくことをお勧めします。

具体的な回復食メニュー例

検査当日の夕食として、以下のようなメニューがおすすめです:

  • 卵がゆまたは白がゆ(消化が良く、胃に優しい)
  • やわらかく煮た白身魚(タンパク質補給)
  • 大根と人参の煮物(やわらかく煮ることで食物繊維も摂取可能)
  • 具の少ないみそ汁(水分と塩分の補給)
  • デザートにヨーグルトかプリン(カルシウム補給と消化促進)

翌日の朝食には、食パンやロールパンなどのシンプルなパン類と、ヨーグルトや温かいスープなどを組み合わせるのも良いでしょう。脂肪分の多いバターやマヨネーズは控え、ジャムやはちみつなど消化の良いものを選びます。

胃の調子が良ければ、翌日の昼食からは徐々に通常の食事に戻していくことができますが、脂っこいものや刺激物は引き続き控えめにするのが無難です。

胃カメラ検査後に起こりやすい症状と対処法

胃カメラ検査後には、いくつかの症状が現れることがあります。これらの多くは検査の影響による一時的なものですが、適切な対処が必要です。

検査後によくある症状

胃カメラ検査後によく見られる症状には以下のようなものがあります:

  • ・のどの違和感・痛み:内視鏡の挿入による刺激で起こります
  • ・腹部の膨満感:検査中に送り込まれた空気によるものです
  • ・げっぷや放屁:体内に入った空気が出ようとする自然な反応です
  • ・軽い吐き気:内視鏡による刺激や鎮静剤の影響で起こることがあります
  • ・青い便:色素(インジゴカルミン)を使用した場合に見られることがあります

 

これらの症状のほとんどは24時間以内に自然に改善します。のどの違和感は2〜3日続くこともありますが、徐々に良くなっていきます。

注意が必要な症状

一方で、以下のような症状が現れた場合は、すぐに医療機関に連絡することが重要です:

  • ・強い腹痛:持続する場合や増強する場合は要注意
  • ・発熱:38度以上の発熱は感染の可能性があります
  • ・黒い便や血便:消化管出血の可能性があります
  • ・嘔吐:特に繰り返す場合や血液が混じる場合は危険信号
  • ・胸痛や呼吸困難:緊急性の高い症状です

 

これらの症状は稀ですが、生検部位からの出血や穿孔(せんこう:消化管に穴が開くこと)などの合併症の可能性があります。早期発見・早期治療が重要なので、異常を感じたらためらわずに連絡してください。

症状への対処法

検査後の一般的な症状には、以下のように対処するとよいでしょう:

  • ・のどの違和感:冷たすぎない飲み物でこまめに水分補給、のど飴の使用
  • ・腹部の膨満感:ゆっくり歩くなど軽い運動で腸の動きを促進
  • ・げっぷや放屁:自然に出すことで楽になります、我慢しないでください
  • ・軽い吐き気:少量の水分を少しずつ摂取、横になって休む

 

症状が長引く場合や心配な場合は、遠慮なく医療機関に相談してください。患者さんの不安を取り除くことも、私たち医療者の大切な役割だと考えています。

胃カメラ検査後の生活上の注意点

胃カメラ検査後は、食事だけでなく生活面でもいくつかの注意点があります。適切な過ごし方をすることで、体への負担を減らし、スムーズな回復につながります。

検査当日の過ごし方

検査当日は、以下のような点に注意して過ごしましょう:

  • ・入浴:シャワーは問題ありませんが、長時間の入浴や熱いお風呂は血流が増加して出血リスクが高まるため避けましょう
  • ・運動:激しい運動や重い物の持ち上げは避け、軽い散歩程度にとどめましょう
  • ・飲酒・喫煙:アルコールは胃粘膜を刺激し、喫煙は血管を収縮させるため、どちらも控えましょう
  • ・薬の服用:医師から特別な指示がない限り、普段の薬は通常通り服用して構いません

 

特に鎮静剤を使用した場合は、その日の車の運転や機械操作、重要な判断を要する業務は避けてください。鎮静剤の影響は個人差がありますが、24時間程度は残ることがあります。

検査翌日以降の生活

検査翌日からは、基本的に通常の生活に戻ることができますが、生検を行った場合などは以下の点に注意しましょう:

  • ・食事:徐々に普通の食事に戻しますが、刺激物や消化の悪いものは数日間控えめに
  • ・運動:激しいスポーツや重労働は3日程度控え、体調を見ながら徐々に再開
  • ・飲酒:生検を行った場合は3日程度は控え、その後も適量を心がける
  • ・服薬:抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)を服用している方は、医師の指示に従って再開

 

特に気をつけていただきたいのは、検査結果が出るまでの間に体調の変化があった場合は、すぐに医療機関に連絡することです。早期発見・早期対応が重要です。

まとめ:胃カメラ検査後の回復を促進するポイント

胃カメラ検査後の回復をスムーズに進めるためには、適切な食事と生活習慣が重要です。ここまでの内容をまとめると、以下のポイントが大切です:

  • ・食事再開のタイミング:麻酔や鎮静剤の効果が切れてから(約1時間後)、少量の水から始める
  • ・食事内容:消化の良い食品を選び、脂っこいもの・刺激物・繊維質の多いものは避ける
  • ・食べ方:よく噛んでゆっくり食べ、一度に大量に食べない
  • ・生活面:検査当日は安静に過ごし、アルコール・喫煙・激しい運動は控える
  • ・症状の観察:異常な症状(強い腹痛・発熱・黒い便など)が現れたら速やかに医療機関に連絡

 

胃カメラ検査は、胃がんをはじめとする消化器疾患の早期発見・早期治療に非常に重要な検査です。検査後の適切なケアを行うことで、体への負担を最小限に抑え、スムーズな回復につなげることができます。

当院では、検査後のフォローも丁寧に行っています。不安なことや気になる症状があれば、遠慮なくご相談ください。皆様の健康を守るために、私たちは常にサポートいたします。

胃カメラ検査に対する「辛い・苦しい」というイメージを払拭し、安心して検査を受けていただけるよう、これからも努めてまいります。

 

 

 

 

 

 

 

 

著者情報

石川消化器内科・内視鏡クリニック
院長 石川 嶺 (いしかわ れい)

経歴

平成24年 近畿大学医学部医学科卒業
平成24年 和歌山県立医科大学臨床研修センター
平成26年 名古屋セントラル病院(旧JR東海病院)消化器内科
平成29年 近畿大学病院 消化器内科医局
令和4年11月2日 石川消化器内科内視鏡クリニック開院

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