
健康診断で「便潜血陽性」と判定されたら、不安になりますよね。
「いつまでに検査を受ければいいの?」「少し様子を見てもいいかな?」そんな疑問を抱く方は少なくありません。
実は、便潜血陽性後の精密検査受診率は約70%にとどまっており、残りの約30%の方が精密検査を受けないまま放置している現状があります。しかし、この「放置」が、命に関わる大きなリスクを生むことをご存じでしょうか。
消化器内科・内視鏡専門医として、これまで多くの患者様の大腸カメラ検査を担当してきた経験から、便潜血陽性後の適切な対応について詳しく解説します。
便潜血陽性とは?その意味を正しく理解する
便潜血検査は、目に見えない微量の血液が便に混じっていないかを調べる検査です。
大腸がんやポリープがあると、便が通過する際に組織が傷つき、わずかな出血が起こることがあります。この微量の血液を検出するのが便潜血検査の役割です。
陽性判定が出たということは、「消化管のどこかで出血が起きている可能性がある」というサインなのです。

便潜血陽性でも症状がないのはなぜ?
「体調は普通だし、お腹も痛くないのに陽性なんて…」と思われる方も多いでしょう。
実は、大腸がんは早期の段階では自覚症状がほとんどありません。症状が出てから発見されるケースでは、すでに進行している可能性が高いのです。
だからこそ、症状がなくても便潜血陽性という「サイン」を見逃してはいけません。
便潜血陽性の精度について
便潜血検査で陽性となった方のうち、実際に大腸がんが見つかる割合は約3~5%です。
「たった数%か」と思われるかもしれませんが、この数%の中に早期発見によって救える命があるのです。
また、大腸がんに至る前段階である大腸ポリープが見つかるケースも多く、これらを早期に切除することで将来の大腸がんを予防できます。
便潜血陽性後、いつまでに大腸カメラを受けるべきか
結論から申し上げます。
便潜血陽性の判定が出たら、できるだけ早く、遅くとも1~2か月以内に精密検査を完了することをお勧めします。
推奨される受診タイミング
海外の研究では、便潜血陽性後の精密検査が9~10か月以上遅れると、がんの進行度が上がり、発見時の病期が進んでいることが報告されています。
具体的な目安としては、以下のスケジュールを意識してください。

- 0~4週間以内:医療機関を受診し、大腸カメラの予約を取る(最も理想的)
- ~8週間(2か月)以内:この期間内に検査を終えることがベスト
- 3か月以上:できるだけ早めの受診を(病気が進行するリスクが高まります)
- 9~10か月以上:リスクが大幅に増加するため、避けるべき
仕事や家庭の都合ですぐに検査が難しい場合でも、まずは外来を受診して検査日だけでも先に予約しておくことが安心につながります。
「4週間以内」が一つの目安となる理由
大腸がんは、4週間以上放置することで予後が悪化することが報告されています。
そのため、もし大腸がんだったとしても4週間以内に検査・治療ができれば、放置による予後悪化の可能性は低くなると考えられます。
また、大腸がんは自覚症状がない状態から進行がんになるまで約7年続くとされており、この期間に発見できれば早期治療が可能で、大腸がんによる死亡を防げる可能性が高まります。
便潜血陽性を放置するリスク
「忙しいから」「怖いから」「痔だと思うから」…
さまざまな理由で精密検査を先延ばしにする方がいらっしゃいます。しかし、放置することのリスクは想像以上に大きいのです。
死亡リスクが約4倍に上昇
大規模な追跡調査の結果、便潜血陽性となったにもかかわらず精密検査を受けなかった人は、検査を受けた人に比べて、大腸がんが見つかったときの死亡リスクが約4倍高まることが明らかになっています。
これは、精密検査を受けないことで発見が遅れ、進行した状態でがんが見つかるためです。
早期がんと進行がんの違い
早期の大腸がんであれば、内視鏡での切除が可能で、お腹を切る手術は不要です。治療後の5年生存率は98%以上と、ほぼ完治が期待できます。
一方、進行がんになると手術が必要となり、場合によっては抗がん剤治療も必要になります。生活の質(QOL)にも大きな影響が出てしまいます。
「今しか見つけられないかもしれない小さなサイン」を見逃さないことが、何より大切なのです。
「痔だから大丈夫」という思い込みは危険
「痔があるから便潜血陽性になっただけ」と自己判断する方もいらっしゃいます。
確かに痔は便潜血陽性の原因の一つですが、痔があると思っている人と痔がないと思っている人の間で、便潜血陽性の場合の大腸がんや大腸ポリープの発見割合に差がないという報告もあります。
つまり、痔があっても大腸がんが隠れている可能性は十分にあるのです。自己判断せず、必ず精密検査を受けましょう。
大腸カメラ検査とは?何がわかるのか
便潜血陽性後の精密検査として最も有効なのが、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)です。
肛門から内視鏡を挿入し、大腸全体の粘膜を直接観察することで、出血の原因を特定できます。

大腸カメラで発見できる疾患
大腸カメラ検査では、以下のような疾患を発見できます。
- 大腸がん:早期発見により内視鏡治療が可能
- 大腸ポリープ:がん化する前に切除できる
- 潰瘍性大腸炎:慢性的な炎症性腸疾患
- 大腸憩室:出血や炎症の原因となることがある
- 虚血性腸炎:血流障害による炎症
- 痔核・裂肛:肛門疾患の確認
大腸カメラのメリット
大腸カメラ検査の最大のメリットは、「診断と治療が同時にできる」ことです。
小さなポリープであれば、検査中にその場で切除することが可能です。大きめのポリープや早期がんの場合でも、特殊な内視鏡治療で対応できるケースが多く、お腹を切る手術を避けられます。
また、組織を採取して病理検査を行うことで、「良性か悪性か」「どれくらい進んでいるか」を正確に判断でき、次の治療方針が明確になります。
「苦しい」「痛い」というイメージについて
大腸カメラに対して「辛い・苦しい」というイメージをお持ちの方も多いでしょう。
しかし、現在は鎮静剤(麻酔)を使用することで、半分眠ったような状態で検査を受けることができます。多くの患者様が「気づいたら終わっていた」と感じられるほど、苦痛を最小限に抑えた検査が可能です。
当院でも鎮静剤を使用した無痛内視鏡検査を提供しており、患者様の不安や恐怖感を取り除く工夫をしています。
信頼できる受診先の選び方
大腸カメラ検査を受けるなら、信頼できる医療機関を選ぶことが重要です。
どのようなポイントに注目すれば良いのでしょうか。
消化器・内視鏡専門医がいるか
大腸カメラ検査は、医師の技術と経験によって検査の精度や患者様の負担が大きく変わります。
日本消化器病学会の消化器病専門医や、日本消化器内視鏡学会の内視鏡専門医といった資格を持つ医師が在籍しているかを確認しましょう。
専門医であれば、微細な病変も見逃さず、安全かつ正確な検査が期待できます。
鎮静剤(麻酔)を使用した無痛検査が可能か
鎮静剤を使用することで、検査中の苦痛や恐怖感を大幅に軽減できます。
「以前の検査が辛かった」「初めてで不安」という方は、鎮静剤を使用した無痛内視鏡検査を提供しているクリニックを選ぶと安心です。
当日検査や土曜検査に対応しているか
平日は仕事で忙しい方にとって、土曜日に検査を受けられることは大きなメリットです。
また、初診当日に検査が可能なクリニックであれば、スムーズに精密検査を進められます。待ち時間や滞在時間の短縮に取り組んでいる医療機関を選ぶことで、負担を減らせます。

高性能な内視鏡設備が整っているか
拡大内視鏡やNBI(狭帯域光観察)などの最新設備を導入しているクリニックでは、粘膜の微細な変化まで観察でき、早期がんの発見率が向上します。
大学病院に劣らない高精度の検査が可能な設備を備えているかも、選択のポイントです。
CTや超音波エコーなど総合的な検査が可能か
大腸カメラだけでなく、必要に応じてCT検査や超音波エコー検査も実施できる体制が整っていると、より包括的な診断が可能です。
肝臓、胆嚢、膵臓などの精査も同時に行えるクリニックであれば、消化器全体の健康管理を任せられます。
大腸カメラ検査の流れと準備
大腸カメラ検査を初めて受ける方にとって、「どんな準備が必要なの?」「当日はどうなるの?」という疑問があるでしょう。
ここでは、検査の流れと準備について簡単にご説明します。
検査前日の食事制限
大腸カメラは、腸の中がきれいになっていないと正確な検査ができません。
検査前日は消化に良いものを選び、繊維質の多い食品や脂っこい食事は避けましょう。クリニックから専用の食事指示がある場合は、それに従ってください。
当日の下剤服用
検査当日は、腸管洗浄剤(下剤)を服用して腸の中をきれいにします。
約2リットルの洗浄液を2~3時間かけて飲み、便が透明になるまで排便を繰り返します。この過程が「辛い」と感じる方もいらっしゃいますが、適切な指導とサポートがあれば安心して進められます。
検査当日の流れ
検査当日は、鎮静剤を使用する場合は点滴を行い、リラックスした状態で検査室に入ります。
検査自体は通常15~30分程度で終了します。鎮静剤を使用した場合は、検査後に休憩室で30分~1時間程度お休みいただき、意識がはっきりしてからご帰宅いただきます。
検査結果は当日または後日、医師から詳しく説明があります。組織検査を行った場合は、結果が出るまで1~2週間程度かかります。
検査後の注意事項
鎮静剤を使用した場合、当日の車や自転車の運転は控えてください。
また、ポリープ切除を行った場合は、一時的に運動や食事の制限があります。医師の指示に従って、安静に過ごしましょう。
よくある質問と誤解
「2回のうち1回だけ陽性だから様子を見てもいい?」
便潜血検査は通常2回分の便を検査しますが、「2回とも陽性でなければ大丈夫」というわけではありません。
1回でも陽性であれば精密検査を受けることが推奨されています。検査の精度上、2回実施して1度でも引っかかってほしいという設計になっているためです。
「もう一度便潜血検査をして陽性だったら検査する」はNG
便潜血陽性後に再度便潜血検査を行い、「次も陽性だったら大腸カメラを受ける」という考え方は、医学的には推奨されません。
便潜血検査は、大腸がんがあるから必ず陽性になるものではなく、7年間で一度くらいは陽性になる可能性が高いという程度の検査です。一度でも陽性となった時点で、精密検査を受けることが重要です。
「便潜血陰性なら大腸がんの心配はない?」
便潜血検査が陰性でも、大腸がんではないと断言できるわけではありません。
腸内で出血が起きていても便に血液が混ざらないケースもあるため、便潜血検査の精度には限界があります。長く続く下痢や便秘、腹痛、血便、細い便などの症状がある場合は、便潜血検査の結果にかかわらず、消化器内科を受診することをお勧めします。
まとめ:早期発見が命を救う
便潜血陽性は、体からの重要なサインです。
「忙しいから」「怖いから」と先延ばしにせず、できるだけ早く、遅くとも1~2か月以内に精密検査を受けることが、あなたの命と健康を守ります。
大腸がんは早期発見できれば、ほぼ完治が期待できる病気です。進行してから見つかると治療も大変になり、生活の質にも大きな影響が出てしまいます。
「今しか見つけられないかもしれない小さなサイン」を見逃さず、勇気を持って一歩を踏み出してください。
当院では、消化器・内視鏡専門医による丁寧な診察と、鎮静剤を使用した無痛の大腸カメラ検査を提供しています。初診当日の検査や土曜日の検査にも対応しており、お忙しい方でも安心して受診いただけます。
便潜血陽性と言われたら、どうぞお気軽にご相談ください。あなたの健康を守るために、私たちが全力でサポートいたします。
詳しくはこちら:石川消化器内科内視鏡クリニック

著者情報
石川消化器内科・内視鏡クリニック
院長 石川 嶺 (いしかわ れい)
経歴
平成24年 近畿大学医学部医学科卒業
平成24年 和歌山県立医科大学臨床研修センター
平成26年 名古屋セントラル病院(旧JR東海病院)消化器内科
平成29年 近畿大学病院 消化器内科医局
令和4年11月2日 石川消化器内科内視鏡クリニック開院




