
健康診断で肝機能異常を指摘されたあなたへ
健康診断の結果を受け取り、「肝機能異常」「要再検査」という文字を見て不安になっていませんか?
実は、健康診断で肝機能の異常を指摘される方は年々増加しており、決して珍しいことではありません。
近年では食生活の乱れや運動不足といった生活習慣の変化、内臓肥満による「脂肪肝」が増加しているため、肝機能障害を指摘される方が多くなっているのです。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期段階では自覚症状がほとんどありません・・・
しかし、放置すると「肝硬変」や「肝がん」といった重篤な病気へ進行するリスクがあります。
だからこそ、異常を指摘されたら早めに消化器内科を受診し、精密検査を受けることが大切です。
この記事では、消化器・内視鏡専門医として多くの肝機能異常の患者様を診察してきた経験から、検査の流れと順番をわかりやすく解説します。
肝機能検査の数値が示すもの
健康診断の血液検査では、主に3つの数値で肝機能を評価します。

AST(GOT)とALT(GPT)
「AST」「ALT」は、肝臓の細胞に含まれる酵素です。
肝臓が何らかのダメージを受けて細胞が壊されると、血液中にこれらの酵素が溢れ出してしまい、数値が高くなります。
つまり、AST・ALTの数値は肝臓へのダメージの程度を反映しているのです。
ただし、ASTは肝臓以外の筋肉や赤血球にも存在するため、ALTが正常値でASTだけが高い場合は、肝臓以外の原因も考えられます。
γ-GTP(ガンマ・ジーティーピー)
「γ-GTP」は、肝臓の解毒作用に関係する酵素です。
肝臓がダメージを受けているとき以外にも、胆道や膵臓の疾患で数値が高くなることがあります。
特にアルコールに敏感に反応する特徴があるため、日常的にお酒を飲んでいる方は数値が高くなりやすいです。
最近では、飲酒しない方でも肝臓に中性脂肪が溜まり、γ-GTPの数値が高くなるケースが増えています。
再検査が必要な数値の目安
健康診断で「要注意」と判定される数値は以下の通りです。
- AST:31〜50 U/L
- ALT:31〜50 U/L
- γ-GTP:51〜100 U/L
これらの数値が出た場合は、精密検査を受けることをおすすめします。
さらに、AST・ALTが51以上、γ-GTPが101以上の場合は「異常」と診断され、必ず精密検査が必要です。
医療機関での治療が必要なケースも考えられるため、数値を確認して早めに受診しましょう。
消化器内科での初診の流れ
肝機能異常を指摘されたら、消化器内科を受診しましょう。
初診では、まず受付で健康保険証と健康診断の結果を提出します。
健康診断の結果があると、医師にこれまでの数値の推移を正確に伝えることができるため、必ず持参してください。

問診票の記入
受付で問診票をお渡ししますので、以下の内容について記入していただきます。
- 現在の症状(倦怠感、食欲不振、腹部の違和感など)
- 症状が始まった時期
- 既往歴(過去にかかった病気)
- 服用中のお薬やサプリメント
- 飲酒習慣(頻度と量)
- 家族歴(肝臓病の家族がいるか)
症状の詳細をメモしておくと、医師に正確に伝えることができます。
医師による問診と身体診察
診察室では、まず医師が問診票をもとに詳しくお話を伺います。
「いつから症状がありますか?」「どのような時に不調を感じますか?」「食事との関連はありますか?」「便通はどうですか?」といった質問に答えていただきます。
問診の後、身体診察を行います。
腹部の視診(見て観察する)、聴診(聴診器で音を聞く)、触診(手で触れて確認する)などを行い、腹部の異常や腫瘤の有無などを確認します。
これらの問診と身体診察の結果から、必要な検査を判断します。
消化器内科で行う精密検査の順番
肝機能異常の原因を特定するため、段階的に検査を進めていきます。
ステップ1:血液検査
まず、詳細な血液検査を行います。
健康診断よりも詳しい項目を調べることで、肝臓の状態をより正確に把握できます。
具体的には、以下のような項目を測定します。
- 肝酵素(AST、ALT、γ-GTP、ALP、LAP)
- 黄疸の数値(ビリルビン)
- 肝臓の線維化や合成能(血小板数、プロトロンビン時間、アルブミン)
- ウイルス検査(B型肝炎、C型肝炎、EBウイルス、サイトメガロウイルスなど)
- 自己免疫反応の抗体
採血は腕の静脈から行い、痛みはほんの一瞬です。
結果は数時間から数日で出ますが、当院では迅速検査システムを導入しており、多くの項目は当日中に結果が出ます。
ステップ2:腹部超音波検査(エコー検査)
血液検査と並行して、腹部超音波検査を行います。
超音波を用いて肝臓、胆のう、膵臓、脾臓、腎臓などの臓器の状態を観察する検査です。
放射線被ばくがなく、痛みもない安全な検査方法です。
検査前に4〜6時間程度の絶食が必要な場合があります。
これは、胆のうの収縮状態や膵臓の観察をしやすくするためです。
検査時は、上半身を露出して検査台に仰向けに寝ていただきます。
お腹にゼリー状の超音波用ジェルを塗り、プローブと呼ばれる機器を当てて検査を行います。
検査時間は15〜20分程度です。
腹部超音波検査では、肝臓の脂肪化や腫瘤、胆石、膵臓の腫大や腫瘤、腎臓の結石や腫瘤などを発見することができます。

ステップ3:CT検査(必要に応じて)
超音波検査で異常が見つかった場合や、より詳しい画像診断が必要な場合は、CT検査を行います。
当院では院内にCTを完備しており、必要になったときには速やかにご案内できます。
胸部レントゲン同等の被ばく量で胸部CT検査が可能という特徴もあります。
CT検査では、肝臓の形状、脂肪肝の程度、腫瘍の有無、脾臓の腫れ、腹水の有無などを詳しく調べることができます。
また、閉塞性黄疸(胆石や腫瘍などにより胆汁の流れが悪くなる疾患)を除外するためにも有用です。
ステップ4:肝生検(原因不明の場合)
血液検査や画像検査を行っても原因が分からず、肝機能障害が改善しない場合に行うことがあります。
超音波検査で肝臓を確認した上で、腹部に生検針を刺し、組織の一部を採取します。
採取した組織を顕微鏡で観察することで、炎症や線維化の程度を正確に評価できます。
肝生検は入院が必要な検査のため、必要に応じて専門医療機関へご紹介することもあります。
肝機能異常の主な原因疾患
検査の結果、肝機能異常の原因として以下のような疾患が見つかることがあります。
非アルコール性脂肪肝炎(NAFLD/NASH)
肥満や糖尿病、脂質異常症などが原因で肝臓に脂肪が蓄積し、炎症や線維化を引き起こす疾患です。
近年増加している疾患の一つで、飲酒習慣がなくても発症します。
放置すると肝硬変や肝がんへ進行するリスクがあるため、早期発見と生活習慣の改善が重要です。
アルコール性肝障害
過度な飲酒により、肝臓がアルコールを分解する際にダメージを受けることで発症します。
脂肪肝、アルコール性肝炎、肝硬変へと進行することがあります。
治療の基本は禁酒であり、早期に飲酒をやめることで肝機能の改善が期待できます。
ウイルス性肝炎
B型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)の感染が原因で肝臓に炎症を起こします。
慢性化すると肝硬変や肝がんのリスクが高まりますが、近年では抗ウイルス薬による治療が劇的に進歩しており、適切な治療で完治や病状のコントロールが可能になっています。
自己免疫性肝炎
免疫システムが肝臓を攻撃することで炎症を引き起こす疾患です。
血液検査で自己抗体が検出されることで診断されます。
ステロイド治療などの免疫抑制療法が有効です。
薬剤性肝障害
特定の薬剤やサプリメントの使用により、肝臓がダメージを受けることがあります。
原因となる薬剤の中止が治療の基本です。
普段服用している薬やサプリメントは、必ず医師に伝えるようにしましょう。

治療と生活習慣の改善
肝機能異常の治療は、原因に応じて異なります。
生活習慣の改善
多くの場合、生活習慣の改善が治療の基本となります。
- 飲酒の制限:アルコール性肝障害の場合は禁酒が必須です
- 食生活の見直し:バランスの取れた食事を心がけ、脂肪肝の改善を目指します
- 適度な運動:肥満や糖尿病がある場合、運動療法が効果的です
- 体重管理:肥満がある場合は、適正体重への減量が重要です
薬物療法
原因疾患に応じて、以下のような薬物療法を行います。
- 肝保護薬:肝臓の負担を軽減し、機能回復を促進します
- 抗ウイルス薬:ウイルス性肝炎の場合に使用します
- 免疫抑制薬:自己免疫性肝炎の場合に使用します
- 利尿剤や制酸薬:肝硬変の対症療法に使用します
定期的な経過観察
肝機能異常は、一度改善しても再び悪化することがあります。
そのため、定期的に血液検査や超音波検査を受けて、肝臓の状態を確認することが大切です。
特に、肥満や糖尿病、脂肪肝がある方は、肝線維化が進行する可能性があるため、継続的なフォローが必要です。
当院では、消化器・内視鏡専門医として、すべての診察、検査、検査結果説明までを担当いたしますので、安心してご相談ください。
放置すると危険な理由
肝機能異常を放置すると、どうなるのでしょうか?
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど、症状が現れにくい臓器です。
初期段階では自覚症状がないことが多く、異常に気づいた時には病気がかなり進行していることがあります。
肝機能異常が続くと、以下のような経過をたどることがあります。
- 慢性肝炎:肝臓の炎症が6か月以上持続する状態
- 肝硬変:肝臓が硬くなり、機能が低下する状態
- 肝不全:肝臓の機能が著しく低下し、命に関わる状態
- 肝がん:肝臓に悪性腫瘍ができる状態
特に、肝硬変や肝がんに進行すると、完治することが難しくなります。
だからこそ、健康診断で異常を指摘されたら、すぐに消化器内科を受診して精密検査を受けることが重要なのです。
自覚症状が出た頃には、すでに病状が進行している可能性があります。
発熱、倦怠感、頭痛、褐色尿、黄疸、食欲不振などの症状が出たときには、かなり悪化していることが多いです。
まとめ
健康診断で肝機能異常を指摘されたら、放置せずに早めに消化器内科を受診しましょう。
肝臓は自覚症状が出にくい臓器ですが、放置すると肝硬変や肝がんといった重篤な病気へ進行するリスクがあります。
早期に原因を特定し、適切な治療や生活習慣の改善を行うことで、肝機能の回復や病状の進行を防ぐことができます。
消化器内科での精密検査は、血液検査、腹部超音波検査、必要に応じてCT検査や肝生検を段階的に行います。
これらの検査により、肝機能異常の原因を正確に特定し、最適な治療方針を決定します。
当院では、消化器・内視鏡専門医として、すべての診察、検査、検査結果説明までを担当いたします。
初診当日の検査や土曜日の検査にも対応しており、お忙しい方でも受診しやすい環境を整えています。
肝機能異常でお悩みの方は、どうぞ安心してご相談ください。
詳しい検査や治療については、石川消化器内科内視鏡クリニックまでお気軽にお問い合わせください。

著者情報
石川消化器内科・内視鏡クリニック
院長 石川 嶺 (いしかわ れい)
経歴
平成24年 近畿大学医学部医学科卒業
平成24年 和歌山県立医科大学臨床研修センター
平成26年 名古屋セントラル病院(旧JR東海病院)消化器内科
平成29年 近畿大学病院 消化器内科医局
令和4年11月2日 石川消化器内科内視鏡クリニック開院




