
便秘と下痢を繰り返す症状、その正体とは
「便秘が続いたと思ったら、急に下痢になる」「お腹の調子が安定しない」…こんな症状にお悩みではありませんか?
便秘と下痢を交互に繰り返す症状は、単なる体質の問題ではなく、腸の働きに何らかの異常が生じているサインかもしれません。
消化器内科の専門医として、このような症状で来院される患者さんを数多く診てきました。多くの方が「いつか治るだろう」と放置してしまい、症状が悪化してから受診されるケースも少なくありません。
便秘と下痢を繰り返すときは、検査が必要か整理
生活習慣だけでなく、腸の炎症やポリープなどが関係することもあります。症状の経過をもとに必要な検査を相談できます。
不安解消メモ:検査の流れ・準備(下剤/食事)と費用目安も確認できます。
便秘と下痢を繰り返す主な原因
過敏性腸症候群(IBS)の可能性
便秘と下痢を繰り返す症状の原因として、最も多いのが**過敏性腸症候群(IBS)**です。
過敏性腸症候群は、腸に器質的な異常がないにもかかわらず、腹痛を伴う便秘や下痢などが慢性的に続く病気です。便通の異常で受診した場合、約2~3割がこの過敏性腸症候群と診断されます。
主な原因は、ストレス、不安、抑うつ、恐怖などの心理的要因や自律神経の失調とされています。社会の複雑化やストレスの増加に伴い、症状に悩む人が増えている病気です。

大腸疾患のサイン
便秘と下痢を繰り返す症状は、大腸がんなどの大腸疾患のサインである可能性もあります。
特に、左側結腸(下行結腸~直腸)に腫瘍が生じたときに、便秘と下痢が繰り返される症状が現れやすくなります。その他、ときどき便に血が混じる、便が細くなる、お腹の張り、腹痛などの症状を伴うことがあります。
ただし、症状が出現してから見つかる大腸がんはかなり進行してしまっていることが多いので注意が必要です。
腸内環境の乱れ
腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランスが崩れると、腸の働きが乱れ、排便トラブルが引き起こされます。
善玉菌は腸の健康を保ち、便秘を防ぎます。悪玉菌が優勢になると、腸の炎症が起き、下痢やガス溜まりを引き起こします。
食生活の乱れ、水分不足、食物繊維の欠如が便秘を悪化させ、刺激の強い食べ物や脂肪分が多い食事は腸を過剰に刺激して下痢を引き起こします。
こんな症状があれば要注意
すぐに受診すべき危険なサイン
以下のような症状がある場合は、すぐに消化器内科を受診してください。
- 突然便秘になり、まったく出ない
- 便が細くなった
- 血便、粘液便
- 腹部のしこり
- 激しい腹痛
- 吐き気・嘔吐
- 発熱
- 急に体重が減った
これらの症状は、大腸がんや腸閉塞、虚血性腸炎などの重篤な疾患のサインである可能性があります。

様子を見てもよい症状との違い
一方で、以下のような症状の場合は、生活習慣の改善で様子を見ることができる場合もあります。
- 仕事や学校がある日に調子が悪くなりやすい
- 長期の休みの時は気にならない
- 排便後に症状が一時的に緩和される
- 腹部の張りや膨満感
ただし、症状が1カ月以上続く場合や、日常生活に支障をきたす場合は、一度検査を受けることをおすすめします。
必要な検査と診断の流れ
問診と腹部診察
まず、問診にて症状の詳細をお尋ねします。
便の状態や回数、食習慣・生活習慣、便秘以外の症状の有無などを確認し、症状の原因を探ります。その上で、腹部の触診を行い、お腹の張りやしこりの有無を確認します。
腹部レントゲン検査
腹部レントゲン検査では、腸内のガスや便の溜まり具合を確認できます。
腸閉塞や便秘の程度を評価するために有効な検査です。
血液検査
貧血、炎症、出血の有無などを確認します。
また、糖尿病や甲状腺機能低下症などが疑われる場合には、血液検査で確認します。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
大腸内視鏡検査は、大腸の中を直接観察できる最も有効な検査です。
血便、発熱、体重減少などが見られる場合、大腸に関する既往症がある場合などに行われます。大腸がんや潰瘍性大腸炎など、様々な大腸の疾患を診断できます。
また、がんになる可能性のあるポリープを発見した場合は、大きさによってはその場で切除することもできます。検査と同時に治療ができるのは、他の大腸検査にはないメリットです。

40歳を超えたら一度は検査を
40歳を過ぎたら、症状がなくても一度は大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。
大腸がんの罹患率は年齢とともに高くなるため、大腸がん検診は40歳以上で推奨されています。初期の大腸がんは症状がほとんどないことが知られていますので、定期的な検査が重要です。
また、数年以内に大腸内視鏡検査を受けられたことがない方で、便秘と下痢を繰り返す症状がある場合は、一度検査をおすすめします。
検査前に知っておきたいこと
大腸カメラの準備
大腸カメラを行う前に、下剤を飲んで腸をきれいにしていただく必要があります。
検査前日のお食事も調節いただく必要があり、消化に良いものを選ぶことが重要です。
鎮静剤の使用について
カメラを肛門から挿入しますので、検査中はお痛みや違和感が生じることがあります。
鎮静剤(麻酔)を使用すれば、ほとんど眠った状態で苦痛なく検査が終わります。ただし、鎮静剤を使用した場合は、検査後の運転はできませんので、ご注意ください。
検査当日の所要時間
検査自体は15~30分程度で終わりますが、前処置や検査後の休息時間を含めると、半日程度の時間を見ておく必要があります。
仕事を休めない方は、検査の日程調整が必要になります。

治療と生活習慣の改善
過敏性腸症候群の治療
過敏性腸症候群の治療では、生活習慣の改善が大切です。
食事療法や薬物療法を中心に、必要に応じて心理療法などを行います。規則正しい生活と十分な睡眠、適度な運動が推奨されます。また、ストレスの原因をなるべく避けて、ストレスを抱え込まない生活を送りましょう。
薬物療法では、症状に合わせて、腸の運動を整える薬、腸内細菌の乱れを整える整腸剤(プロバイオティクス)、お腹の痛みを抑える薬、下痢止め薬などを処方します。
食事で気をつけること
1日3食、規則正しくバランスのよい食事を心がけましょう。
暴飲暴食、寝る前の食事、油っぽい食べ物、アルコールや香辛料、炭酸飲料、コーヒーなど刺激の強い食べ物も控えめに。十分な水分摂取も大切です。
腸内フローラを整えるために、ヨーグルトや発酵食品を積極的に摂取し、食物繊維を豊富に含む野菜や果物の摂取も心がけましょう。
ストレスマネジメント
心理的ストレスが引き金になることが多いため、薬物療法でも改善しにくい場合は、ストレスとの上手な付き合い方を身につけていく「ストレスマネジメント」、不安や緊張をやわらげる「リラクゼーション療法」などを薬物療法と併用していく場合もあります。
受診のタイミングと相談の仕方
こんな時は早めに受診を
便秘と下痢を繰り返す状態が1カ月以上続いている場合は、一度受診することをおすすめします。
特に、40歳を越えている方で過去3年間に大腸内視鏡検査を受けていない場合は、検討された方が良いと思います。
症状を正確に伝えるポイント
受診の際は、以下のポイントを整理してお伝えいただけると、診断がスムーズになります。
- 症状が始まった時期
- 便の状態(硬さ、色、形)
- 排便の回数と時間帯
- 腹痛の有無と程度
- 血便や粘液便の有無
- 体重の変化
- ストレスや生活環境の変化
検査を受けるべきか迷ったら
「症状が軽いから様子を見よう」と思っていても、実は重大な病気が隠れている場合があります。
便秘と下痢を繰り返す症状は、過敏性腸症候群のような機能的な問題から、大腸がんのような器質的な疾患まで、様々な原因が考えられます。
少しでも気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。
まとめ:早期発見・早期治療が大切です
便秘と下痢を繰り返す症状は、単なる体質の問題ではなく、腸の働きに何らかの異常が生じているサインです。
過敏性腸症候群のような機能的な問題であれば、生活習慣の改善や適切な治療で症状をコントロールできます。一方で、大腸がんなどの重篤な疾患が隠れている場合もあります。
症状が1カ月以上続く場合、40歳を超えて数年間検査を受けていない場合、血便や体重減少などの危険なサインがある場合は、早めに消化器内科を受診してください。
当クリニックでは、大腸内視鏡検査を中心に、患者さん一人ひとりの症状に合わせた丁寧な診療を心がけています。
症状でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
石川消化器内科内視鏡クリニックでは、大腸内視鏡検査のご予約を承っております。
症状を確認して、適切な検査・治療をご提案いたします。

著者情報
石川消化器内科・内視鏡クリニック
院長 石川 嶺 (いしかわ れい)
経歴
平成24年 近畿大学医学部医学科卒業
平成24年 和歌山県立医科大学臨床研修センター
平成26年 名古屋セントラル病院(旧JR東海病院)消化器内科
平成29年 近畿大学病院 消化器内科医局
令和4年11月2日 石川消化器内科内視鏡クリニック開院









