
「内視鏡検査では異常なしと言われたのに、胃の痛みや下痢が治まらない…」
そんな悩みを抱えている方は、決して少なくありません。
実際、検査で目に見える異常がなくても、症状が続くケースは多く存在します。その背景には「機能性ディスペプシア」や「過敏性腸症候群」といった、内視鏡では見つけにくい疾患が隠れている可能性があります。
この記事では、消化器内科・内視鏡専門医の立場から、検査結果が正常でも症状が続く場合に考えられる原因と、次に検討すべき対応について詳しく解説します。
「異常なし」でもつらい症状が続くときは
症状の原因が別の臓器・機能面にあることもあります。経過を踏まえて「次に何を確認するか」を相談しましょう。
不安解消メモ:再受診時は検査結果や経過メモがあると整理が早いです。
内視鏡検査で「異常なし」と言われたのに症状が続く理由
内視鏡検査は、食道・胃・十二指腸や大腸の粘膜を直接観察できる優れた検査です。
しかし、粘膜に炎症や潰瘍、腫瘍といった「目に見える異常」がない場合、検査結果は「異常なし」となります。

ところが、症状の原因は必ずしも粘膜の異常だけではありません。
胃や腸の「動き」や「感覚の過敏性」といった機能的な問題が、症状を引き起こしていることがあるのです。こうした機能的な異常は、通常の内視鏡検査では確認できません。
機能性ディスペプシアとは
機能性ディスペプシアは、内視鏡検査で異常が見つからないにもかかわらず、胃もたれ・みぞおちの痛み・吐き気・早期満腹感といった症状が続く状態を指します。
国内では10人に1人が該当すると言われており、決して珍しい疾患ではありません。
原因として考えられるのは、胃の運動機能の低下、胃が過敏になっている状態、ストレスによる自律神経の乱れ、胃酸の分泌異常などです。また、ピロリ菌感染が関与している場合もあります。
過敏性腸症候群(IBS)とは
過敏性腸症候群は、腸に異常がないにもかかわらず、慢性的な腹痛や便秘・下痢などの便通異常を繰り返す疾患です。
ストレスや不規則な生活、腸内環境のバランスが関与すると考えられています。
特に、通勤・通学途中や会議前など、緊張する場面で腹痛や便意が起こりやすいのが特徴です。症状が続くことで生活の質が著しく低下し、仕事や日常生活に支障をきたすこともあります。
内視鏡では見つからない疾患の可能性
内視鏡検査で異常が見つからなくても、症状の原因となる疾患は他にも存在します。
ここでは、見逃されやすい疾患について詳しく見ていきましょう。
好酸球性食道炎
好酸球性食道炎は、アレルギーによる食道の炎症です。
内視鏡で観察しても軽度の変化しか見られないことが多く、組織検査(生検)を行わないと診断できません。食べ物がつかえる感じや、飲み込みにくさといった症状が特徴です。

食道運動障害
食道の拡張機能や収縮機能に異常があると、食べ物がつかえる・飲み込みにくいといった症状が現れます。
通常の内視鏡検査や高解像度食道内圧検査では異常が見つからないこともあり、新しい検査法によって初めて診断されるケースもあります。
咽喉頭酸逆流症
胃酸が食道を超えてのどまで逆流することで、のどの違和感・つかえ感・イガイガ感が生じる疾患です。
逆流性食道炎と診断されて薬を飲んでも症状が改善しない場合、咽喉頭酸逆流症の可能性があります。診断が難しく、見逃されやすい疾患の一つです。
小腸出血
胃カメラや大腸カメラでは観察できない小腸からの出血が、血便の原因となることがあります。
特に、痛み止め(NSAIDs)を長期間服用している方では、小腸に潰瘍ができて出血することがあります。通常の内視鏡検査では確認できないため、カプセル内視鏡などの特殊な検査が必要になります。
症状が続く場合に次に取るべき対応
内視鏡検査で異常がなくても症状が続く場合、適切な対応を取ることが重要です。
ここでは、具体的な対応方法について解説します。
詳しい問診と症状の記録
症状の特徴を詳しく把握することが、正確な診断につながります。
どのような時に症状が出るのか、食事との関連性はあるか、ストレスとの関係はどうか、といった点を記録しておくと診察時に役立ちます。
例えば、食後に症状が出やすい、脂っこいものを食べた後に悪化する、緊張する場面で症状が出る、といった情報は診断の重要な手がかりになります。
追加の検査を検討する
症状に応じて、以下のような追加検査が有効な場合があります。
- 腹部エコー検査:肝臓・胆のう・膵臓など、胃腸以外の臓器の異常を確認
- 血液検査:炎症の有無、甲状腺機能、貧血などをチェック
- 食道内圧検査:食道の運動機能を詳しく評価
- カプセル内視鏡:小腸の観察が可能
- CT検査:精密検査として必要な場合に実施
これらの検査は、症状や診察所見に基づいて医師が判断します。

生活習慣の見直し
機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群では、生活習慣の改善が症状の軽減につながります。
具体的には、以下のような点に注意しましょう。
- 暴飲暴食・早食いを避ける
- 脂っこいもの・刺激物を控える
- 十分な睡眠を取る
- 規則正しい生活リズムを保つ
- ストレスを上手に解消する
- 適度な運動を取り入れる
これらの習慣を改善することで、自律神経のバランスが整い、症状が軽減することがあります。
薬物療法の検討
症状に応じて、以下のような薬が有効な場合があります。
- 消化管運動改善薬:胃腸の動きを改善
- 胃酸分泌抑制薬:胃酸の分泌を抑える
- 整腸剤:腸内環境を整える
- 漢方薬:六君子湯・半夏瀉心湯など
- 抗不安薬・抗うつ薬:ストレス関連の症状に有効な場合がある
薬物療法は、症状の種類や程度に応じて医師が適切に選択します。
ピロリ菌検査と除菌治療の重要性
機能性ディスペプシアの症状がある方で、ピロリ菌感染が確認された場合、除菌治療によって症状が改善することがあります。
ピロリ菌は慢性胃炎を引き起こし、胃の不快感の原因となります。
除菌治療は、胃酸分泌抑制薬1種類と抗生物質2種類を1週間連続で内服する方法です。除菌に成功すれば、将来的な胃がんのリスクも低減できます。
内視鏡検査で異常がなくても、ピロリ菌検査を受けていない方は、一度検査を検討されることをお勧めします。

症状が改善しない場合の再検査のタイミング
治療を行っても症状が改善しない場合や、新たな症状が出現した場合は、再度検査を受けることが重要です。
特に、以下のような症状がある場合は、早めに受診してください。
- 体重が急激に減少した
- 血便や黒色便が出る
- 嘔吐を繰り返す
- 食事がほとんど摂れなくなった
- 腹痛が徐々に強くなっている
これらの症状は、重大な疾患のサインである可能性があります。
また、前回の内視鏡検査から1年以上経過している場合や、家族歴に消化器がんがある場合は、定期的な検査を受けることをお勧めします。
まとめ
内視鏡検査で異常なしと言われても、症状が続く場合は決して「気のせい」ではありません。
機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群といった、内視鏡では見つけにくい疾患が原因である可能性があります。
症状が続く場合は、詳しい問診や追加の検査、生活習慣の見直し、適切な薬物療法によって、症状をコントロールできることが多くあります。
一人で悩まず、消化器内科の専門医に相談することが、症状改善への第一歩です。
当院では、内視鏡検査だけでなく、検査結果が正常でも症状が続く方の診療にも力を入れています。症状でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
症状が続いてお困りの方へ
石川消化器内科内視鏡クリニックでは、内視鏡検査後の症状についても丁寧に診察いたします。
お電話でのご相談も受け付けております。
次の一歩:症状の変化を持って相談
症状の頻度・誘因・体重変化などを整理しておくと、次の検討(追加検査や生活調整)が進めやすくなります。
不安解消メモ:必要な検査の優先順位を一緒に決められます。

著者情報
石川消化器内科・内視鏡クリニック
院長 石川 嶺 (いしかわ れい)
経歴
平成24年 近畿大学医学部医学科卒業
平成24年 和歌山県立医科大学臨床研修センター
平成26年 名古屋セントラル病院(旧JR東海病院)消化器内科
平成29年 近畿大学病院 消化器内科医局
令和4年11月2日 石川消化器内科内視鏡クリニック開院









