コラム

2026.03.15

血便の原因と必要な検査〜症状別の対処法を専門医が解説

血便に気づいたら・・・まず知っておくべきこと

トイレで便を確認したとき、血が混じっていたら誰でも不安になります。

「これは痔なのか、それとも何か重大な病気なのか」と心配になるのは当然です。血便は、消化管のどこかで出血が起きているサインであり、その原因はさまざまです。軽い痔から大腸がんまで、幅広い病気が考えられるため、自己判断で放置することは避けるべきです。

血便には鮮やかな赤色の「鮮血便」と、黒っぽい「黒色便(タール便)」があり、色によって出血している場所がある程度推測できます。また、肉眼では確認できないほど微量の血液が便に混じっている「便潜血検査陽性」も血便に含まれます。

血便が出た場合、最も大切なのは「早めに消化器内科を受診すること」です。

血便の種類と色から分かる出血部位

血便の色や性状は、出血している場所を知る重要な手がかりになります。

鮮血便(赤く鮮やかな血液)

便の表面に鮮やかな赤い血液が付着している場合や、排便後に血液だけが出る場合は「鮮血便」と呼ばれます。この場合、肛門や直腸など、出口に近い部分からの出血が疑われます。

痔や裂肛(切れ痔)が最も多い原因ですが、直腸がんや直腸ポリープからの出血の可能性もあります。痛みを伴わないことも多く、「いつもの痔だろう」と軽視してしまいがちですが、念のため検査を受けることが大切です。

粘血便(血液と粘液が混じった便)

血液とゼリー状の粘液が便に付着している場合は「粘血便」と呼ばれます。

感染症や、潰瘍性大腸炎・クローン病といった炎症性腸疾患が疑われます。これらの病気では、大腸に炎症が起きているため、粘液と血液が一緒に排出されることがあります。腹痛や下痢を伴うことも多く、早めの受診が必要です。

暗赤色便(沈んだ赤色の便)

便全体が暗い赤色をしている場合、出血してから時間が経過しているため、大腸の奥や小腸からの出血が考えられます。

幅広い腸疾患の可能性があり、虚血性腸炎や大腸憩室出血、大腸がんなどが原因となることがあります。

黒色便(タール便)

黒く粘度の高い、タールのような便が出る場合は「タール便」と呼ばれます。

これは食道、胃、十二指腸など、上部消化管からの出血が疑われます。胃がんや胃潰瘍、十二指腸潰瘍から出血している可能性があり、大出血や穿孔を起こすと命に関わることもあるため、すぐに医療機関を受診してください。

便潜血検査陽性(肉眼では見えない血便)

健康診断や人間ドックで行われる便潜血検査で「陽性」と判定された場合、肉眼では確認できない程度の血液が便に混じっています。

陽性の場合、精密検査を受けなければ出血の原因は分かりません。大腸がんのスクリーニング検査として行われますが、陽性で精密検査を行った場合、痔が発見されることが最も多く、大腸がんが発見されるのは数%程度とされています。ただし、前がん病変の大腸ポリープが発見されることが30%程度あるため、その場で切除することで将来の大腸がん予防に役立ちます。

血便の原因となる主な病気

血便を引き起こす病気は多岐にわたります。

頻度的には良性疾患である痔が最も多いですが、中には早急な治療が必要な病気も含まれています。ここでは、血便の原因となる主な病気について解説します。

痔・裂肛(切れ痔)

最も頻度の高い血便の原因です。

肛門の内側にいぼのような出っ張りができる「内痔核(いぼ痔)」や、肛門が切れる「裂肛」から出血します。痛みはないことが多く、排便後にトイレットペーパーに血がつく程度のことが多いです。ただし、痔があるからといって他の病気を見逃してはいけません。

大腸ポリープ・大腸がん

大腸ポリープは前がん病変であり、放置すると大腸がんに進行する可能性があります。

鮮血便や便潜血検査陽性として発見されることが多く、大腸カメラ検査で確認し、その場で切除することで将来の大腸がん予防につながります。大腸がんは早期発見できれば治癒率が高い病気です。

大腸憩室出血

大腸の壁に小さい袋状の凹み(憩室)ができ、そこから出血する病気です。

腹痛を伴わず、突然大量の鮮血便が出ることが特徴です。多くの場合、自然に止血しますが、繰り返すこともあります。

虚血性腸炎

大腸に血液が十分に届かず、潰瘍や壊死を起こした部分から出血する病気です。

腹痛が起きた後に血便が出ることが多く、高齢者に多く見られます。軽症であれば自然に治癒しますが、重症の場合は入院治療が必要です。

潰瘍性大腸炎・クローン病

大腸に慢性的な炎症が起こる病気で、粘血便や血の混じった下痢が特徴です。

難病指定されており、長期的な治療が必要になります。早期発見と適切な治療により、症状をコントロールすることが可能です。

感染性腸炎

細菌やウイルス、寄生虫の感染により腸で炎症が起き、出血することがあります。

血の混じった下痢や発熱、頭痛、吐き気など、風邪のような症状を伴うことが多いです。ノロウイルスやカンピロバクターなどが原因となります。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

ピロリ菌の感染や非ステロイド性抗炎症薬などにより、胃や十二指腸の粘膜がただれ、潰瘍ができて出血します。

黒色便(タール便)として現れることが多く、みぞおちの痛みや胸やけを伴うことがあります。

すぐに受診すべき血便の症状

血便が出た場合、基本的には早めに医療機関を受診すべきですが、特に以下のような症状がある場合は緊急性が高いため、すぐに受診してください。

  • 大量の鮮血便や下血が出る
  • 便が真っ黒である(タール便)
  • 腹痛が強い
  • 発熱や嘔吐を伴う
  • めまい、立ちくらみ、息切れ、動悸などの貧血症状がある
  • 血圧低下、脈や呼吸数の異常、顔面や手足の蒼白、意識低下、失神などのショック症状がある

これらの症状がある場合、大量出血や出血性ショックに陥る可能性があり、緊急の内視鏡検査や止血処置、輸血が必要になることもあります。

ためらわずに救急車を呼ぶか、すぐに病院を受診してください。

血便が出た場合に必要な検査

血便の原因を特定するためには、適切な検査が必要です。

問診で血便の状態や症状を確認した後、以下のような検査を組み合わせて診断を進めます。

問診

血便の性状(色、量、タイミング)、腹痛の有無、慢性か急性か、服薬状況、既往歴などを詳しく聞き取ります。

この情報が診断の重要な手がかりになります。

直腸診

痔などが疑われる場合、肛門や直腸の状態を指で確認します。

腫瘍や痔核の有無、出血の確認を行います。

血液検査

血便による貧血がないか、腸炎などが疑われる場合は炎症の程度を確認します。

すぐに結果が出るため、初期の緊急性を見極める際にも有効です。

腹部エコー

当日すぐにできる検査で、炎症や感染、虚血による下血の場合に有効です。

大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)

大腸の病気が疑われた場合に行います。

大腸の粘膜を直接観察できるため、出血している場所や原因疾患を正確に把握できます。必要な場合には止血処置も行うことができ、組織採取による病理検査で幅広い疾患の確定診断が可能です。さらに、前がん病変の大腸ポリープが発見された場合には、その場で切除する日帰り手術を行うことで将来の大腸がん予防につながります。

特に以下に該当する方は、積極的に大腸カメラを受けることをお勧めします。

  • 大量の下血がある
  • 40歳以上で一度も大腸カメラを受けたことがない
  • 便潜血検査で陽性と判定された
  • 少量でも繰り返す血便、持続する血便がある
  • 粘液交じりの血便がある
  • 腹痛を伴う血便がある

胃カメラ検査(胃内視鏡検査)

黒色便(タール便)など、胃や十二指腸からの出血が疑われる場合に行います。

食道、胃、十二指腸の状態を確認し、出血している部分の止血処置が可能です。組織を採取して病理検査やピロリ菌感染検査を行うこともできます。

小腸カプセル内視鏡

小腸出血が疑われる場合や、胃カメラや大腸カメラを行っても原因不明の血便がある際に行います。

カプセル型の小型カメラを飲み込み、小腸内部を撮影します。

血便の治療法と対処法

血便の治療は、原因となる病気によって異なります。

痔・裂肛の治療

軟膏や坐薬、生活指導(便秘の改善、食生活の見直し)で対応します。

重症の場合は手術が必要になることもあります。

大腸ポリープの治療

大腸カメラ検査時に内視鏡的切除を行います。

切除したポリープは病理検査に提出し、がん化していないか確認します。

大腸憩室出血の治療

多くの場合、経過観察で自然に止血します。

繰り返す場合や大量出血の場合は、内視鏡的止血処置や手術が必要になることもあります。

感染性腸炎の治療

抗菌薬や整腸剤などで治療します。

脱水を防ぐため、十分な水分補給が重要です。

潰瘍性大腸炎・クローン病の治療

内服薬や定期通院で症状をコントロールします。

重症例は入院治療が必要になることもあります。

大腸がんの治療

内視鏡切除、外科手術、化学療法など、進行度に応じた治療を行います。

早期発見できれば、完治の可能性が高い病気です。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療

胃酸を抑える薬やピロリ菌の除菌治療を行います。

出血が続く場合は、内視鏡的止血処置が必要になることもあります。

血便とストレスの関係

ストレスは消化器系に大きな影響を与えます。

自律神経が乱れると、消化器のコントロールが乱れて機能不全による便通異常になりやすく、潰瘍の発症や悪化にはストレスが大きく関与します。ストレスをなくそうと考えてしまうと、それがストレスになりますので、熱中できる趣味の時間を積極的につくってストレスを上手に解消しましょう。

便潜血検査陽性と言われたら

健康診断や人間ドックで便潜血検査が陽性と判定された場合、必ず精密検査を受けてください。

「再検査で陰性だったから大丈夫」「痔があるからそれが原因だろう」と自己判断して放置するのは非常に危険です。便潜血検査が2回法を採用しているのは、大腸がんがあっても常に出血しているわけではないため、わずかな出血でも見逃さないようにという理由からです。

1回でも陽性と判定されたら、必ず大腸カメラ検査を受けるようにしてください。

便潜血陽性と判定された方に大腸カメラ検査を行うと、約40%の方は異常が見つかりませんが、約50%の方にポリープ、約6%の方に早期がん、約4%の方に進行がんが見つかったと報告されています。まとめると、便潜血陽性と判定された方の約60%に治療すべき病気が見つかっていることになります。

便潜血陽性はチャンスと考えましょう。無症状であっても保険診療として大腸カメラ検査を受けることができるため、費用的負担が少なく内視鏡検査を受けられるとても良い機会です。

まとめ:血便が出たら早めの受診を

血便は、消化管のどこかで出血が起きているサインです。

痔のような良性疾患が原因のことも多いですが、大腸がんや潰瘍性大腸炎など、早期発見・早期治療が重要な病気が隠れていることもあります。「いつもの痔だから」と自己判断せず、まずは消化器内科を受診して適切な検査を受けることが大切です。

特に、便潜血検査で陽性と判定された方、40歳以上で一度も大腸カメラを受けたことがない方、繰り返す血便や粘液交じりの血便がある方は、積極的に大腸カメラ検査を受けることをお勧めします。

大腸がんは早期発見できれば治癒率が高い病気です。

血便に気づいたら、ためらわずに専門医に相談してください。

石川消化器内科内視鏡クリニックでは、鎮静剤を使用した苦痛の少ない大腸カメラ検査を行っています。血便や便潜血陽性でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

血便がある場合は消化器内科へ

血便の原因には痔だけでなく、大腸ポリープや大腸がんなどの可能性もあります。症状に応じて大腸カメラ検査を行い、原因を確認します。

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気になる症状があれば早めの相談を

血便が続く場合は原因を確認することが大切です。検査の流れや準備についても丁寧にご説明します。

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著者情報

石川消化器内科・内視鏡クリニック
院長 石川 嶺 (いしかわ れい)

経歴

平成24年 近畿大学医学部医学科卒業
平成24年 和歌山県立医科大学臨床研修センター
平成26年 名古屋セントラル病院(旧JR東海病院)消化器内科
平成29年 近畿大学病院 消化器内科医局
令和4年11月2日 石川消化器内科内視鏡クリニック開院

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