コラム

2025.09.19

内視鏡検査が怖くない~鎮静剤で実現する無痛検査の全て

内視鏡検査に対する不安と鎮静剤の役割

「胃カメラを受けなければならないけど、あの苦しさが怖い・・・」

内視鏡検査は消化器疾患の診断において非常に重要な検査ですが、多くの方がこのような不安を抱えています。特に胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)は、のどの奥にスコープが触れることによる嘔吐反射や不快感から、「辛い・苦しい」というイメージが先行しているのが現状です。大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)においても、検査中の腹痛や不快感を心配される方は少なくありません。

しかし、現代の内視鏡検査は、このような不安や苦痛を大幅に軽減する方法が確立されています。その代表的な方法が「鎮静剤」の使用です。鎮静剤を適切に使用することで、患者さんは半分眠ったような状態で検査を受けることができ、苦痛や恐怖をほとんど感じることなく検査を終えることができるのです。

私は消化器内科医として長年内視鏡検査に携わってきましたが、鎮静剤の適切な使用によって、以前は内視鏡検査に強い恐怖心を持っていた患者さんが、「あれ?もう終わったの?」と驚かれる場面を数多く経験してきました。

この記事では、内視鏡検査における鎮静剤の役割、メリット・デメリット、そして当院での無痛内視鏡検査の実際について詳しくご説明します。検査に対する不安を和らげ、より安心して検査を受けていただくための情報をお届けします。

鎮静剤とは?内視鏡検査での働きを解説

鎮静剤とは、不安や緊張を和らげ、眠気をもよおす効果のある薬剤です。内視鏡検査で使用される鎮静剤は、完全に意識をなくす全身麻酔とは異なり、呼びかけに反応できる程度の「意識下鎮静」を目指すものです。

内視鏡検査で一般的に使用される鎮静剤には、ミダゾラムやプロポフォールなどがあります。当院では主にミダゾラムを使用しています。これらの薬剤は静脈内に注射することで、リラックス効果や健忘効果(検査の記憶が薄れる効果)をもたらします。

鎮静剤の効果と作用機序

鎮静剤を静脈内に投与すると、多くの患者さんは「頭がぼーっとする」「まぶたが重くなる」といった感覚を経験します。その後、うとうとした状態になり、検査中の苦痛や不安を感じにくくなります。中には完全に眠ってしまう方もいますが、基本的には呼びかけに反応できる程度の鎮静状態を維持します。

鎮静剤の効果には個人差があり、同じ量を投与しても反応が異なることがあります。そのため、当院では患者さん一人ひとりの年齢、体格、既往歴などを考慮して、最適な量を慎重に決定しています。

鎮静剤が効いてくると、多くの方は「あっという間に検査が終わった」と感じます。実際には通常通りの時間がかかっているのですが、鎮静剤の健忘効果により、検査中の記憶が曖昧になるため、時間が短く感じられるのです。

これが、内視鏡検査における鎮静剤の大きな利点の一つです。検査自体の苦痛を軽減するだけでなく、検査の記憶も薄れることで、次回検査への恐怖心も軽減されるのです。

鎮静剤を使用するメリットとデメリット

内視鏡検査で鎮静剤を使用することには、様々なメリットとデメリットがあります。患者さんが自分に合った検査方法を選択できるよう、これらを正しく理解しておくことが大切です。

鎮静剤使用のメリット

鎮静剤を使用する最大のメリットは、検査中の苦痛や不安を大幅に軽減できることです。具体的には以下のようなメリットがあります:

  • 嘔吐反射や不快感を感じにくくなる
  • 検査への恐怖心や緊張感が和らぐ
  • 検査中の記憶が薄れるため、心理的負担が軽減される
  • 患者さんがリラックスすることで、医師も精度の高い検査を行いやすくなる
  • 次回検査への抵抗感が減少する

特に、過去に内視鏡検査で辛い経験をされた方や、強い嘔吐反射がある方にとって、鎮静剤の使用は検査を受ける大きな助けとなります。

「以前の検査がつらかったので、もう二度と受けたくない」

このように思われていた患者さんが、鎮静剤を使用した検査後に「こんなに楽に受けられるなら、また来年も受けます」とおっしゃることも少なくありません。定期的な検査が必要な方にとって、これは非常に重要なポイントです。

鎮静剤使用のデメリット

一方で、鎮静剤の使用にはいくつかの注意点やデメリットもあります:

  • 検査当日は車やバイク、自転車の運転ができない
  • 予想以上に眠気が続く場合がある
  • 呼吸が弱くなったり、血圧が低下したりする可能性がある
  • 検査前後の記憶が低下または消失する(逆行性健忘)
  • まれにアレルギー反応が起こる可能性がある

特に高齢の方や、肝機能・腎機能に障害のある方、呼吸器疾患をお持ちの方は、鎮静剤の効果が強く出たり、副作用が出やすくなったりする場合があります。そのため、事前の問診や検査が重要となります。

当院では、鎮静剤使用後の安全確保のため、検査後は専用のリカバリールームでしっかりと休息していただき、血圧や酸素飽和度などのモニタリングを行っています。また、鎮静剤の効果が完全に切れるまでは、ご家族の方に付き添っていただくようお願いしています。

安心のプライバシーに配慮した半個室の空間

 

どうですか?鎮静剤を使った内視鏡検査に少し興味が湧いてきましたか?

経口・経鼻内視鏡と鎮静剤の組み合わせ

内視鏡検査には、口から挿入する「経口内視鏡」と鼻から挿入する「経鼻内視鏡」があります。それぞれに特徴があり、鎮静剤との組み合わせによって、さらに快適な検査が可能になります。

経口内視鏡と鎮静剤

経口内視鏡は、口からスコープを挿入する従来の方法です。スコープの直径は約8.9~10mmで、画質や機能性に優れています。しかし、スコープが舌の根元に触れることで嘔吐反射が起こりやすく、多くの方が不快感を感じます。

経口内視鏡に鎮静剤を組み合わせると、この嘔吐反射による不快感をほとんど感じることなく検査を受けることができます。鎮静状態では反射が抑制されるため、スコープの挿入もスムーズに行えます。

当院では、経口内視鏡検査の際に、患者さんの状態に合わせて鎮静剤の量を0.1mg(1gの1万分の1)単位で細かく調整しています。これにより、必要最小限の薬量で効果的な鎮静を実現し、副作用のリスクも最小限に抑えています。

経鼻内視鏡と鎮静剤

経鼻内視鏡は、鼻からスコープを挿入する方法です。スコープの直径は約5.4mmと細く、舌の根元を通過しないため、嘔吐反射が起こりにくいという大きな利点があります。検査中に会話もできるため、初めての方でも安心感があります。

経鼻内視鏡は、鎮静剤なしでも比較的楽に受けられる方法ですが、鼻の構造によっては挿入時に痛みを感じる場合があります。また、鼻腔が狭い方では挿入が難しいこともあります。

当院では、経鼻内視鏡にも鎮静剤を組み合わせることができます。「鎮静剤で眠るのが怖い、でも楽に受けたい」という方には経鼻内視鏡を、「過去に経鼻内視鏡でもつらかった」という方には鎮静剤を併用した経鼻内視鏡を提案しています。

現在の経鼻内視鏡は技術の進歩により、以前のものと比べて視野が広く、画質も向上しています。当院では最新のハイビジョン経鼻内視鏡を導入しており、経口内視鏡と変わらない質の高い検査を提供しています。

患者さんの状態や希望に応じて、経口・経鼻の選択と鎮静剤の使用を組み合わせることで、一人ひとりに最適な検査方法を提案しています。どの方法が自分に合っているか迷われる場合は、ぜひ一度ご相談ください。

当院における無痛内視鏡検査の実際

当院では、患者さん一人ひとりの状態や希望に合わせた内視鏡検査を提供しています。特に「無痛内視鏡検査」は多くの患者さんに選ばれており、検査への恐怖心を軽減する大きな助けとなっています。

検査の流れと所要時間

鎮静剤を使用した内視鏡検査の流れは以下のようになります:

  • 問診・説明:検査の内容や鎮静剤の効果・副作用について詳しく説明します
  • 前処置:胃カメラの場合は咽頭麻酔、大腸カメラの場合は前日からの食事制限と当日の下剤服用
  • 鎮静剤投与:静脈に点滴を行い、鎮静剤を投与します
  • 検査実施:半分眠った状態で検査を行います(胃カメラは約5-10分、大腸カメラは約15-30分)
  • 回復:専用のリカバリールームで30分〜1時間程度休息していただきます
  • 結果説明:鎮静剤の効果が落ち着いた後、検査結果を説明します

検査自体の所要時間は短いですが、鎮静剤の効果が完全に切れるまで安静にしていただく必要があるため、来院から帰宅までの総所要時間は2〜3時間程度を見込んでください。

安全性への取り組み

鎮静剤を使用する際の安全性確保は最も重要な課題です。当院では以下のような取り組みを行っています:

  • 検査前の詳細な問診と必要に応じた検査(血液検査など)
  • 患者さんの年齢・体格・既往歴に合わせた鎮静剤量の調整
  • 検査中の心電図、血圧、酸素飽和度などの継続的なモニタリング
  • 万一の事態に備えた救急対応の準備
  • 専門の医療スタッフによる検査後のケア

当院では消化器内科専門医である院長自らが診察から検査、結果説明まですべてを担当しています。長年の経験と専門知識を活かし、安全で質の高い内視鏡検査を提供しています。

「内視鏡検査は怖い」と思っている方も多いかもしれませんが、適切な鎮静剤の使用と専門的な技術により、ほとんど苦痛を感じることなく検査を受けることが可能です。

患者さんの声と実際の体験談

当院で鎮静剤を使用した内視鏡検査を受けられた患者さんからは、様々な感想をいただいています。実際の体験談をいくつかご紹介します。

Aさん(50代女性):「以前別の病院で胃カメラを受けた時は、ずっとオエオエして本当に苦しかったです。でも今回は鎮静剤を使ったら、気がついたら終わっていて驚きました。こんなに楽に受けられるなら、定期検査も怖くないです。」

Bさん(40代男性):「大腸カメラは痛いというイメージがあって、ずっと避けていました。でも会社の健診で便潜血陽性と言われ、思い切って受けることにしました。鎮静剤のおかげで検査中のことはほとんど覚えていません。思ったより全然楽でした。」

Cさん(60代男性):「胃カメラも大腸カメラも同日で受けましたが、鎮静剤のおかげで両方とも苦痛なく終えることができました。検査後は少しふらつきがありましたが、リカバリールームでしっかり休ませてもらえたので安心でした。」

このように、多くの患者さんが鎮静剤の効果に驚き、検査への不安が軽減されたと感じています。特に、過去に辛い経験をされた方にとって、鎮静剤を使用した検査は大きな変化をもたらします。

もちろん、鎮静剤の効き方には個人差があり、「少し意識があって検査の記憶がある」という方もいれば、「完全に眠ってしまい何も覚えていない」という方もいます。いずれにしても、従来の検査と比べて苦痛が大幅に軽減されることは間違いありません。

内視鏡検査を受けるタイミングと定期検査の重要性

内視鏡検査は、消化器疾患の早期発見・早期治療において非常に重要な役割を果たします。では、どのようなタイミングで検査を受けるべきでしょうか。

検査を受けるべきタイミング

以下のような症状や状況がある場合は、内視鏡検査を検討する良いタイミングです:

  • 胃の症状(胃痛・胃もたれ・吐き気など)が続く
  • 胸やけや呑酸(酸っぱい液体が喉まで上がってくる感覚)が頻繁にある
  • 便潜血検査で陽性反応が出た
  • 血便や下血がある
  • 原因不明の貧血がある
  • ピロリ菌陽性と診断された
  • 家族に胃がんや大腸がんの既往がある
  • 過去に胃・大腸ポリープを指摘されたことがある

また、症状がなくても、40歳を過ぎたら定期的な検査をお勧めします。特に50歳以上になると、胃がんや大腸がんのリスクが高まるため、定期検査の重要性が増します。

定期検査の間隔

検査の間隔は、個人のリスク因子や前回の検査結果によって異なりますが、一般的には以下のような目安があります:

  • 胃カメラ:1〜2年に1回(ピロリ菌陽性や萎縮性胃炎がある場合は1年に1回)
  • 大腸カメラ:3〜5年に1回(ポリープの既往がある場合は1〜3年に1回)

当院では、患者さん一人ひとりの状態に合わせた検査計画を提案しています。定期検査の重要性をご理解いただき、無理なく継続できるよう、鎮静剤を使用した苦痛の少ない検査を提供しています。

内視鏡検査は「辛い・苦しい」というイメージがありますが、鎮静剤の使用によって、そのハードルは大きく下がっています。定期的な検査で早期発見・早期治療を実現し、健康寿命を延ばしましょう。

まとめ:安心して内視鏡検査を受けるために

内視鏡検査は消化器疾患の早期発見・早期治療に欠かせない重要な検査です。しかし、「辛い・苦しい」というイメージから、検査を避けてしまう方も少なくありません。

鎮静剤を使用した無痛内視鏡検査は、このような不安や恐怖を大幅に軽減し、より多くの方に内視鏡検査を受けていただくための大きな助けとなります。

当院では、患者さん一人ひとりの状態や希望に合わせて、以下のような検査オプションを提供しています:

  • 鎮静剤を使用した経口内視鏡(胃カメラ)
  • 鎮静剤を使用した経鼻内視鏡(胃カメラ)
  • 鎮静剤を使用した大腸内視鏡(大腸カメラ)
  • 経口・経鼻の選択可能な胃カメラ
  • 初診当日の内視鏡検査
  • 土曜日の内視鏡検査

内視鏡検査に不安をお持ちの方、過去に辛い経験をされた方も、ぜひ一度ご相談ください。適切な鎮静剤の使用と専門的な技術により、ほとんど苦痛を感じることなく検査を受けることが可能です。

消化器疾患、特にがんは早期発見が何よりも重要です。鎮静剤を使用した無痛内視鏡検査で、検査へのハードルを下げ、より多くの方に定期的な検査を受けていただくことが、私たち医療者の願いです。

健康な毎日を送るために、定期的な内視鏡検査を習慣にしましょう。当院では、患者さんの健康を誠心誠意サポートいたします。

詳しい情報や予約については、石川消化器内科・内視鏡クリニックまでお気軽にお問い合わせください。

 

 

 

 

 

 

 

 

著者情報

石川消化器内科・内視鏡クリニック
院長 石川 嶺 (いしかわ れい)

経歴

平成24年 近畿大学医学部医学科卒業
平成24年 和歌山県立医科大学臨床研修センター
平成26年 名古屋セントラル病院(旧JR東海病院)消化器内科
平成29年 近畿大学病院 消化器内科医局
令和4年11月2日 石川消化器内科内視鏡クリニック開院

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