コラム

2025.08.01

消化器内科受診の目安となる症状チェックリスト〜自己診断の方法とは

お腹の調子が悪いとき、「これは病院に行くべきなのか」と迷った経験はありませんか?消化器の不調は日常的に感じることも多く、どの症状が受診の目安になるのか判断が難しいものです。

消化器内科は、食道・胃・腸・肝臓・胆のう・膵臓など、消化に関わる臓器の病気を専門とする診療科です。これらの臓器に問題が生じると、様々な症状が現れます。

私は消化器内科医として長年診療に携わってきましたが、多くの患者さんが「もっと早く受診すればよかった」と話されます。早期発見・早期治療が可能な病気も少なくありません。

消化器内科を受診すべき主な症状

消化器の不調は様々な形で現れます。以下の症状が見られたら、消化器内科の受診を検討しましょう。

特に重要なのは、症状が長く続く場合や、急に強い症状が現れた場合です。自分の体調の変化に敏感になり、異変を感じたら我慢せずに医療機関を受診することをお勧めします。

腹痛・胃痛

腹痛は消化器疾患でもっとも多い症状の一つです。痛みの場所や性質によって、原因となる臓器や疾患が異なります。

みぞおちの痛みは胃や十二指腸の問題を示すことが多く、右上腹部の痛みは肝臓や胆のう、左上腹部の痛みは膵臓や脾臓の問題が考えられます。下腹部の痛みは主に腸の問題を示唆します。

以下のような腹痛がある場合は、消化器内科を受診しましょう。

  • 1週間以上続く腹痛
  • 徐々に強くなる痛み
  • 夜間に痛みで目が覚める
  • 食事と関係なく起こる強い痛み
  • これまで経験したことのないような強い痛み

特に注意が必要なのは、持続的な痛みです。腹部に何らかの炎症が生じている可能性があるため、「いつもの痛みだから」と放置せず、受診することをお勧めします。

吐き気・嘔吐

吐き気や嘔吐は、胃腸の問題だけでなく、肝臓や膵臓の疾患でも起こります。一時的な吐き気は食あたりや胃腸炎などが原因のことが多いですが、長く続く場合は注意が必要です。

特に以下のような場合は、早めに受診しましょう。

  • 24時間以上続く嘔吐
  • 嘔吐物に血液や「コーヒー残渣様」の黒い物質が混じる
  • 激しい腹痛を伴う嘔吐
  • 頭痛や意識障害を伴う嘔吐
  • 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)を伴う嘔吐

嘔吐に血液が混じっている場合は、食道や胃に出血がある可能性があり、緊急性が高い状態です。すぐに医療機関を受診してください。

便通の異常と消化器疾患

便通の変化は消化器疾患の重要なサインです。下痢や便秘、血便などの症状は、様々な病気を示唆します。

便通の異常は一時的なものであれば心配ありませんが、長期間続く場合や、他の症状を伴う場合は、消化器内科の受診を検討しましょう。

下痢

下痢は、腸の動きが活発になり、便が水っぽくなる状態です。ウイルスや細菌による感染、食中毒、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患などが原因となります。

以下のような下痢の場合は、消化器内科を受診しましょう。

  • 2週間以上続く下痢
  • 血液や粘液が混じる下痢
  • 38度以上の発熱を伴う下痢
  • 激しい腹痛を伴う下痢
  • 体重減少を伴う下痢
  • 夜間に下痢で目が覚める

特に血便を伴う下痢は、炎症性腸疾患や感染性腸炎、大腸がんなどの可能性があるため、早めに受診することが重要です。

便秘

便秘は、排便回数の減少や排便時の困難さを特徴とします。生活習慣の乱れや食事内容、ストレスなどが原因となることが多いですが、腸閉塞や大腸がんなどの重篤な疾患のサインのこともあります。

以下のような便秘の場合は、消化器内科を受診しましょう。

  • 3週間以上続く便秘
  • 急に始まった頑固な便秘
  • 腹痛や腹部膨満感を伴う便秘
  • 血便や黒色便を伴う便秘
  • 体重減少を伴う便秘
  • 便秘と下痢を繰り返す

特に50歳以上で急に便通が変化した場合は、大腸がんの可能性も考えられるため、早めに検査を受けることをお勧めします。

血便・黒色便

便に血液が混じる、または便が黒くなる症状は、消化管のどこかで出血が起きている可能性を示します。鮮血が混じる場合は主に肛門や直腸、S状結腸からの出血、黒色便は上部消化管(食道・胃・十二指腸)からの出血が考えられます。

どう思いますか?血便や黒色便は、痔による出血以外は重大な疾患のサインであることが多いです。

以下のような場合は、すぐに消化器内科を受診しましょう。

  • 繰り返す血便
  • タール状の黒色便
  • めまいや立ちくらみを伴う血便
  • 腹痛を伴う血便
  • 発熱を伴う血便

血便は大腸ポリープや大腸がん、炎症性腸疾患、感染性腸炎などが原因となることがあります。黒色便は胃潰瘍や十二指腸潰瘍、食道静脈瘤などからの出血が考えられます。

胸やけ・呑酸・げっぷと消化器疾患

胸やけや呑酸(胃酸が喉まで上がってくる感覚)、頻繁なげっぷは、上部消化管の問題を示すことが多い症状です。

これらの症状は一時的なものであれば心配ありませんが、頻繁に起こる場合や、他の症状を伴う場合は、消化器内科の受診を検討しましょう。

胸やけ・呑酸

胸やけは胸の奥や喉の付近に感じる灼熱感や不快感、呑酸は胃酸が喉まで上がってくる感覚です。これらの症状は主に逆流性食道炎によって引き起こされます。

以下のような場合は、消化器内科を受診しましょう。

  • 週に2回以上の胸やけや呑酸
  • 3ヶ月以上続く症状
  • 市販薬で改善しない症状
  • 食べ物や飲み物を飲み込みにくい
  • 胸痛を伴う胸やけ
  • 体重減少を伴う症状

胸やけや呑酸が長期間続く場合、食道粘膜が慢性的に傷つき、バレット食道という状態になることがあります。これは食道がんのリスク因子となるため、適切な治療が必要です。

げっぷ・腹部膨満感

頻繁なげっぷや食後の腹部膨満感は、機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)や胃食道逆流症などが原因となることがあります。

以下のような場合は、消化器内科を受診しましょう。

  • 3ヶ月以上続く頻繁なげっぷ
  • 食後の強い腹部膨満感
  • 体重減少を伴うげっぷや膨満感
  • 嚥下困難を伴う症状
  • 胸痛を伴うげっぷ

これらの症状は生活習慣の改善で軽減することもありますが、長期間続く場合は消化器内科での精査が必要です。

黄疸・腹水と消化器疾患

黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)や腹水(お腹に水がたまる)は、肝臓や胆道系の重篤な疾患を示すことが多い症状です。

これらの症状が見られた場合は、すぐに医療機関を受診してください。

黄疸

黄疸は、ビリルビンという物質が体内に蓄積することで、皮膚や白目が黄色くなる状態です。肝炎、肝硬変、胆石、膵臓がん、胆道がんなどが原因となります。

黄疸を自覚した場合は、以下のような随伴症状にも注意しましょう。

  • 皮膚のかゆみ
  • 尿の色が濃くなる
  • 便の色が白っぽくなる
  • 右上腹部の痛み
  • 全身の倦怠感
  • 発熱

黄疸は重篤な肝胆膵疾患のサインであることが多いため、発見したらすぐに消化器内科を受診してください。

腹水

腹水は、腹腔内に液体がたまる状態です。肝硬変、肝がん、膵臓がん、卵巣がんなどが原因となります。

腹水を疑う症状には以下のようなものがあります。

  • お腹の膨満感
  • 体重の急激な増加
  • 足のむくみ
  • 呼吸困難
  • へそが出てくる

腹水は進行した肝疾患や悪性腫瘍に伴うことが多いため、これらの症状が見られたら早急に消化器内科を受診してください。

消化器内科での検査と診断

消化器内科を受診すると、症状や疑われる疾患に応じて、様々な検査が行われます。ここでは、主な検査について説明します。

検査の内容や準備については、事前に医師や看護師から説明がありますので、不安なことがあれば遠慮なく質問してください。

血液検査

血液検査では、肝機能、膵機能、炎症反応、貧血の有無などを調べます。肝臓の状態を示すAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、膵臓の状態を示すアミラーゼ、リパーゼ、炎症の指標となるCRPなどが主な検査項目です。

また、ピロリ菌感染の有無を調べる抗体検査や、B型・C型肝炎ウイルスの検査も行われることがあります。

血液検査は比較的簡単で、短時間で結果が得られる検査です。多くの消化器疾患の診断の第一歩となります。

内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)

内視鏡検査は、口や肛門から細い管状の機器(内視鏡)を挿入し、消化管の内部を直接観察する検査です。

胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)では、食道・胃・十二指腸を観察します。逆流性食道炎、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、食道がん、胃がんなどの診断に役立ちます。

大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)では、大腸全体を観察します。大腸ポリープ、大腸がん、炎症性腸疾患、虚血性大腸炎などの診断に役立ちます。

内視鏡検査では、必要に応じて組織を採取(生検)して、詳しく調べることもできます。

当院では、鎮静剤(麻酔)を使用した無痛の内視鏡検査を提供しており、半分眠ったような状態で楽に検査を受けていただけます。経鼻内視鏡にも対応しており、患者さんの希望に合わせて経口・経鼻の選択が可能です。

超音波検査(エコー)

超音波検査は、体の表面から超音波を当て、内臓の状態を観察する検査です。肝臓、胆のう、膵臓、脾臓などの状態を調べることができます。

痛みもなく、放射線被ばくもない安全な検査です。脂肪肝、胆石、胆のうポリープ、肝腫瘍などの診断に役立ちます。

当院では高性能な超音波装置を導入しており、肝臓、胆嚢、膵臓の精査が可能です。

CT検査・MRI検査

CT検査は、X線を使って体の断層写真を撮影する検査です。肝臓、膵臓、胆のう、腸などの状態を詳しく調べることができます。

MRI検査は、強い磁気を使って体の断層写真を撮影する検査です。特に肝臓や胆道、膵臓の詳細な観察に適しています。

これらの検査は、腫瘍の有無や大きさ、周囲への広がりなどを調べるのに役立ちます。

当院では院内にCTを設置しており、必要に応じて速やかに検査を行うことができます。胸部CTは胸部レントゲン同等の被ばく量で検査できる点も特徴です。

症状別の自己チェックリスト

ここでは、主な消化器症状について、自己チェックリストを紹介します。該当する項目が多い場合は、消化器内科の受診を検討してください。

ただし、このチェックリストはあくまで目安です。心配な症状がある場合は、チェックリストの結果に関わらず、医療機関を受診することをお勧めします。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍チェックリスト

胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、胃や十二指腸の粘膜が傷つき、くぼみ(潰瘍)ができる病気です。以下の症状がないか確認しましょう。

  • みぞおちの痛み(特に空腹時や食後)
  • 胸やけ
  • げっぷが多い
  • 吐き気がある
  • 嘔吐することがある
  • 胃もたれがする
  • 口臭が気になる
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 背中が痛い
  • 黒い便が出る
  • 吐血することがある

特に黒い便や吐血は、潰瘍からの出血を示す重篤なサインです。これらの症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。

逆流性食道炎チェックリスト

逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで、食道粘膜が炎症を起こす病気です。以下の症状がないか確認しましょう。

  • 胸やけがする(特に食後や横になったとき)
  • 酸っぱい液体が喉まで上がってくる
  • 胸の痛みがある
  • のどの違和感や痛みがある
  • 咳が続く(特に夜間)
  • 声がかすれる
  • 食べ物を飲み込みにくい
  • 食後に胃もたれがする
  • げっぷが多い
  • 口臭が気になる

これらの症状が週に2回以上ある場合や、3ヶ月以上続く場合は、消化器内科を受診しましょう。

過敏性腸症候群チェックリスト

過敏性腸症候群は、腸の機能に問題があり、腹痛や便通異常が起こる病気です。以下の症状がないか確認しましょう。

  • 腹痛がある(特に排便で軽減する)
  • 下痢と便秘を繰り返す
  • 便の形状が変わりやすい(硬い、柔らかい、水様など)
  • 便意を我慢できないことがある
  • 排便後も残便感がある
  • 腹部膨満感がある
  • おならが多い
  • 粘液便が出ることがある
  • ストレスで症状が悪化する
  • 食事で症状が変化する

これらの症状が3ヶ月以上続く場合は、消化器内科を受診しましょう。過敏性腸症候群は命に関わる病気ではありませんが、生活の質を大きく低下させることがあります。

「腸は第二の脳」と言われるほど、私たちの心と体に大きな影響を与えます。腸の健康を守ることは、全身の健康を守ることにつながります。

炎症性腸疾患チェックリスト

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)は、腸に慢性的な炎症が起こる病気です。以下の症状がないか確認しましょう。

  • 血便がある
  • 慢性的な下痢(1日4回以上、夜間も)
  • 腹痛がある
  • 体重減少
  • 発熱
  • 全身倦怠感
  • 関節痛
  • 肛門周囲の痛みや膿瘍
  • 口内炎が繰り返し起こる
  • 眼の炎症

これらの症状、特に血便が続く場合は、早めに消化器内科を受診しましょう。炎症性腸疾患は早期治療が重要です。

消化器内科受診の目安まとめ

消化器内科を受診すべき主な症状をまとめました。以下の症状がある場合は、消化器内科の受診を検討しましょう。

  • 1週間以上続く腹痛・胃痛
  • 24時間以上続く嘔吐、または血液が混じる嘔吐
  • 2週間以上続く下痢、または血液が混じる下痢
  • 3週間以上続く便秘、または急に始まった頑固な便秘
  • 血便・黒色便
  • 週に2回以上の胸やけや呑酸、または3ヶ月以上続く症状
  • 3ヶ月以上続く頻繁なげっぷや腹部膨満感
  • 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
  • 腹水(お腹に水がたまる)
  • 原因不明の体重減少
  • 50歳以上で急に始まった消化器症状

特に、血便・黒色便、黄疸、腹水などの症状は、重篤な疾患のサインであることが多いため、すぐに医療機関を受診してください。

また、症状が軽くても、長期間続く場合や、日常生活に支障をきたす場合は、早めに受診することをお勧めします。

消化器の病気は早期発見・早期治療が重要です。「様子を見よう」と思って放置していると、症状が悪化し、治療が難しくなることがあります。

当院では、患者さんの負担を軽減するため、鎮静剤を使用した無痛の内視鏡検査や、初診当日の検査、土曜日の検査にも対応しています。消化器の不調でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

健康な消化器は、健康な生活の基盤です。少しでも気になる症状があれば、専門医に相談することが、あなたの健康を守る第一歩となります。

詳細はこちら:石川消化器内科・内視鏡クリニック

 

 

 

 

 

 

 

 

著者情報

石川消化器内科・内視鏡クリニック
院長 石川 嶺 (いしかわ れい)

経歴

平成24年 近畿大学医学部医学科卒業
平成24年 和歌山県立医科大学臨床研修センター
平成26年 名古屋セントラル病院(旧JR東海病院)消化器内科
平成29年 近畿大学病院 消化器内科医局
令和4年11月2日 石川消化器内科内視鏡クリニック開院

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